生前贈与を受けた後に、父が亡くなりましたが、相続放棄をすることは可能でしょうか

ご相談です。生前贈与を受けた後に、父が亡くなりましたが、相続放棄をすることは可能でしょうか。

親子間の相続時精算課税制度を利用して、私(長男)は,父から2,500万円の生前贈与を受けとりました。
その後,父が亡くなりましたが、相続の手続きで色々と調べたところ,父が3,000万円の債務の連帯保証をしている事実が発覚しました。相続放棄をしないと、3000万円の負債を負うことになってしまいます。
この場合に,相続放棄は可能でしょうか?
生存時に贈与を受けた資産はどうなるのでしょうか?

【回答】
今回のケース、相続放棄の手続可能期間内でしたら、相続放棄することが可能です。

生前贈与を受けた財産については、そのまま質問者様の所有として問題ありません。
ただし、債権者から、当該生前贈与が詐害行為にあたるので取り消すべきだ(詐害行為取消権)と訴えられる可能性が少なからずあり得る点はご留意ください。

※詐害行為取消権とは,債務者・保証人がお金を返したくないからと考え、自分の財産を他人に意図的に移したことにより弁済ができなくなったと判断されると、その財産の移転が否定され、債権者がそこから回収できる債権者の権利です。

【解説します】
相続時精算課税制度を利用して、父から質問者様(長男)へ生前贈与をすることは、相続財産の前渡し的性質を有するため,民法第921条に規定する法定単純承認「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」に該当し、相続の放棄ができないのではないか,と心配になられたのでは,と推察いたします。  

生前に、自分の財産を自分で自由に処分すること自体は、民法の大原則である私的自治の原則により認められています。

また,相続開始後に相続人が相続の承認をするのか、相続の放棄をするのかは相続人の意思により決めることであり(民法第915条)、生前に被相続人より贈与を受けているからといって相続の放棄を禁止するような規定はありません。

したがって今回のケースにおいて,相続の放棄は可能となります。

ただし,被相続人の財産が3,000万円しかない場合に、3,000万円の借金があるのに2,500万円を家族へ贈与する行為は、債権者からみれば借金の返済逃れや、財産隠しを企図した行為ともとれるため、債権者への返済を困難ならしめる行為として詐害行為取消権により生前の贈与を取り消される可能性があります。
生前の贈与を取り消されてしまうと、質問者様(長男)から債権者へ2,500万円の返済を行うことになるでしょう。

【教訓】
本人が連帯保証人になっている場合には、事前に相続人に告知するように伝えるべきでしょう。

子や親戚の賃貸マンションの連帯保証人,事業資金や住宅ローンの連帯保証人など,残念ながら、依然として連帯保証人を取る制度は残っています。

相続開始後に相続財産を処分してしまい、相続放棄ができなくなってから、被相続人が多額の債務の連帯保証人であることが発覚することもあります。主債務者が夜逃げをして、保証債務が顕在化し、債権者から相続人に返済を求められてしまうと目も当てられません。

事前に本人が「ある債務」の連帯保証人であることがわかっていれば,残された相続人が相続の承認をするのか、相続の放棄をするのか早い段階で決定することができますし、本人の生前にある程度の対策を打つこともできますので,連帯保証の有無も相続人に伝えるべき重要事項と言えるでしょう。

エンディングノート等を活用し、この辺見当ももしっかり行って欲しいところです。 

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